歯科看板におけるコツ「遠視」「中視」「近視」
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看板製作の最大ポイントは「遠視」「中視」「近視」 3つの視点
遠視的視点 | 中視的視点 | 近視的視点 | ||
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業態を伝える。 =歯科医院があることを認識させる。 |
お店の特長を伝える。 =医院の特長を認識させる。 |
お店の詳細を伝え、入りやすさを演出する。 =診療時間などの詳細情報を認識させる。 |
目の前まで行かないと歯科医院だとわからない看板もあれば、歯科と書いた看板を至る所に掲げている歯科医院もあります。これは、本来の看板の目的を理解していないがゆえに起こる現象ではないかと思われます。
看板製作の最大のポイントは、「遠視」「中視」「近視」の3つの視点の効果を把握し、看板を見る人に的確に伝えることです。これはどの業界にも共通することです。この遠視、中視、近視をしっかりと意識しながら考えれば、バランスの良い看板を製作することができます。テナントビルのように看板の数を制限されていても、ひとつの看板が複数の役割を果たすことができるのです。患者さんが歯科医院のどんな情報を欲しがっているのかをしっかりと理解した上で、看板に落とし込むことが大切です。
遠視
遠視的効果を高める工夫
通行人の目に入りやすい看板とは、基本的には「袖看板」「自立看板」「スタンド看板」などの、建物から直角に突き出ている看板です。
その看板をいかに有効活用して、遠視的効果の高い看板を設置できるかを意識してみましょう。
それでは、歯科医院があることを認識させるにはどうすれば良いのでしょうか。
一般的には
- 「歯科(歯)」という文字を使う
- 歯などのイラストを使う
- 写真などを使う
という手段が考えられます。来院してほしい患者さんに合わせて、3つの中から選択することができます。
サインや文字などの存在が視覚的に認知されることを「視認性」といいます。看板における視認性を高めるためにできることとは、文字の大きさ、種類、色などを工夫することが考えられます。
文字の大きさ
バリアフリーなどを推進している交通モビリティ財団では、視認距離ごとの図記号および文字の大きさの設定の目安として、「文字の大きさ×250=視認距離」と設定しています。
歯科医院への来院手段と、看板を発見してから行動に移すまでの距離は、表のようになります。
ちなみに、一般的な道路の案内標識板の漢字は、1文字30pとなっています。
文字の形
一般的には、視認性が高い書体は、角ゴシックもしくは丸ゴシックといわれています。
ただし、書体によって人に与えるイメージは異なり、歯科医院の印象も左右するため、書体の持つイメージを重視する必要があります。明朝体に代表される線が細い視認性の低い書体を使用する時は、大きさに配慮することをお勧めします。
文字の色
視認性の高い色使いは、背景との明度の差が最も重要です。ロゴを作らない場合、患者さんが受ける最も強い印象は文字の色になるため、
視認性だけでなく、しっかりとした基準を持って色を選択しなければなりません。
しかし、建物や周囲の看板の色との相性に配慮しなければならない環境も存在します。そのような場合は、文字と背景の色の組み合わせや、
看板のフレームの色を工夫する必要があります。
また、高齢者が識別しにくい色の組み合わせなどもあるため、補綴分野や歯周病分野などに特化した、高齢者が多く通う歯科医院は、
特に配慮が必要となります。
中視
「中視」の重要性
中視では、医院の特長を認識させることが必要となります。
元々広告的な意味合いを嫌う歯科の看板では最も苦手な視点ですが、患者さんが選択するための基準を与えるという意味では、今後最も重視しなければならない視点だといえます。
中視的効果を高めるためには、院長自身が医院の特長を把握することから始めなくてはなりません。その際に役に立つマーケティングの考え方が、「ランチェスターの法則」と「SWOT分析」です。
ランチェスターの法則
「ランチェスターの法則」は「弱者の戦略」ともいわれています。例えば、小さい企業が成長する上で最も大切なのは営業する地域の範囲を決めることですが、その地域のナンバー1を確保することを目標とするのが、この「ランチェスターの法則」なのです。
地域のナンバー1になると、「1位有利の4原則」という効果が生じるといわれます。
- 効率の良い営業ができるようになる
- 1位という言葉に人が反応する
- 同業者の顧客が移動してくる
- 新規の営業でも信頼度が高い
もちろん一般的な企業の利点ではありますが、「患者さんが来ないのはなぜだろう」とネガティブな視点で集患マーケティングの戦略を考えるより、「地域ナンバー1になるためにはどうすれば良いのだろう」という視点で考えた方が、イメージしやすいのではないでしょうか。
SWOT分析
「SWOT分析」とは、
・内部(自院)を分析し、強み(Strength)と弱み(Weakness)を認識する
・外部環境を分析し、そこにある機会(Opportunity)と脅威(Threat)を認識する
ことをいいます。他院との差別化を図れる特長を認識することや、自院の弱みを改善するか、他院の差別化戦略を防ぐ準備をするかを決めるのに有効です。
つまり、第一次診療圏である半径500mを目安にSWOT分析を行い、地域でナンバー1になれる強みを認識し、訴求することが非常に重要なことなのです。
ここでいうナンバー1とは、売上や患者数のナンバー1だけを意味しているわけではありません。
例えば、
- 遅い時間まで診療している、土日診療を行っている、駐車場が大きいなどの利便性が高い
- インフォームド・コンセントを丁寧に行っている
- 口腔外科、小児歯科、矯正歯科、インプラント、審美歯科、予防歯科などに特化している
- 歯科用CTがある、特診室があるなどの設備が充実している
- 認定医など、誇れるテクニックがある
患者さんが歯科医院を選ぶ基準を思い浮かべてみて、他院と比較してみると、さまざまな視点でナンバー1になれる要素が増えてきます。始めは、本当に小さな領域でも構わないのです。
看板で訴求したいポイント
特に看板で訴求したいのが、遅い時間まで診療している、土日診療を行っている、駐車場が大きいなどに代表される「利便性」が判断できるものです。
歯科の看板を見て来院する患者さんのほとんどは、来院に便利と判断する利便性重視型です。そのため、近いだけではなく、通いやすいポイントをしっかりと表記すると非常にわかりやすいと思います。
また、今後は、歯科医院の増加や、患者さんの歯科医療への関心が高まりつつある中で、今まで以上に厳しい選択の目にさらされることでしょう。そのため、診療科目の特長を医療法の範囲の中で訴求していくということが、非常に重要になってきます。
高額なセミナーなどで習得した知識であれば、それを患者さんに伝えた上で来院してもらう方が、患者さんの安心感につながると考えるべきです。
医療法の制約によってなかなか特長が伝えることができない場合は、医療法に抵触しないホームページアドレスを明記して、患者さんにアピールしたり、選択の基準になる院内の写真を掲げるのも有効な手段だといえます。
近視
心理的圧迫感の解消
「近視」とは、お店の詳細を伝え、入りやすさを演出すること、つまり診療時間などの詳細情報を認識させることをいいます。
林原安徳氏の著書『これが繁盛立地だ!』によると、他業種ではありますが、1階の売上比率を「100」とすると、2階は「87」、3階は「61」、4階は「47」、地下1階は「81」、地下2階は「56」になるという具体的な調査結果も示されています。
1階以外の店舗の売上比率がなぜ低下するのかというと、「入口やエレベーターという心理的圧迫感を2つ通過すること」が最大の要因といわれています。
特に歯科医院の場合、医院選択に迷うのが、心理的圧迫を受けやすい女性であることが多く、また、都心部を中心にテナント料の影響から2階以上の歯科医院が増えていることを考えると、この「心理的圧迫感」をどう解消し、入りやすさを演出するかが非常に重要になってきます。
1階のテナントの場合
このことから考えると、1階にあるだけで、すでに他の医院との差別化ができていると思って良いでしょう。1階ならば窓貼りをして室内を隠すのではなく、院内を見せて入りやすさを演出するのもひとつの方法です。
最近は、窓貼りシートも単色のカッティングシート以外に、写真などに向いているインクジェットシートや、曇りガラス風のシートなど、さまざまな工夫ができる材料が増えてきています。ぜひ有効利用することをお勧めします。また、入口が暗いと入りにくいという意見も多いため、明るく入りやすい雰囲気を出せるかも重要なポイントのひとつです。
1階以外のテナントの場合
せっかくのおしゃれで清潔感あふれる内装も、患者さんに伝わっていないことが多く、ビルの外観で損をしている場合も多く見受けられます。
このような時は、1階などの入口に院内の写真を使った看板を設置し、少しでも医院の雰囲気を伝えることが必要になります。ビルの入口は、夜間は特に入りにくくなるため、看板などを中心にできるだけ入口を明るくすることを心がけましょう。また、ホームページへの誘導を図るのも重要です。
戸建ての歯科医院も、意外と閉鎖的な所が多く、外観からはどんな雰囲気なのかわかりにくい医院がほとんどです。やはり意識的に院内の写真を見せたりして、医院の雰囲気を伝えることを重視しましょう。
院内写真で訴求できること
実は院内写真を看板に使用することは、医院が来院してほしいと考えている患者さんに医院情報を提供するために適した手段でもあります。
また、プライバシーを重視する傾向が強くなってきていることや、ホワイトニングや審美歯科、メインテナンスなどを受けに来ている女性などは口元にコンプレックスを持っている方が多いため、「完全個室診療」や「パーティションなどによる個室診療」などの特長を伝えるのは強みになります。周囲の目を気にせず、落ち着いて治療を受けたいビジネスマンなどにも向いています。
インプラントなどを中心とした自費診療の場合は、「無影灯やクリーンエリアのある手術室」「CTの完備など、設備の写真を選択要素としてアピールすることが可能です。
メインテナンスを重視している場合は、「予防専用のユニット」や「カウンセリングコーナー」の存在などもアピール材料になります。患者さんが歯科医院を選ぶ時代になった今、院内写真を使って医院の特長を伝え、入りやすさを演出することは必要不可欠です。
医院独自の取り組みをアピール
写真以外でぜひ伝えていただきたい要素が、「バリアフリー」「駐車場の有無」「キッズルーム」など、医院独自の取り組みです。特にバリアフリーは車椅子だけでなく、ベビーカーなどを使っている方にも大変有用な取り組みなので、しっかりと伝えることが患者さんのメリットにつながります。
予防や自由診療へのニーズが高まる中、歯科衛生士や歯科技工士が在籍しているのを伝えることも、患者さんにとって有益な情報になってきています。
また、安全性のニーズに応える意味では、「ISOの取得」や「デジタルレントゲン」「滅菌対策」なども、新たに求められつつあるポイントです。
細かく意識していくと、医療法に沿った看板でも、患者さんに医院の特長を十分に訴求できる可能性を持っています。